伯典よもやま話 その7 「用気術」から

用気術」は、1977年に主婦の友社から初版が発行されました。以来、2017年の現在まで愛読者が絶えない人気の書です(2008年より日本開運学会から発行)。人気の秘密は、方位における「なぜ」の部分がわかりやすく、納得がいくように解説されていることでしょう。たとえばなぜ方位盤は北と南が上下逆さまなのか、なぜ四緑に結婚の象意があるのか、など。これまでの方位についての疑問がすらすら解決することに目をみはるはずです。

さらに「傾斜鑑法」や「同会判断術」など、これまで秘伝とされてきた占術が惜しげもなく解説されることも人気の理由のひとつです。読者はこれらの占術が即実践で使えることに大きな手ごたえをもつはずです。

また、周易を愛好するものにとっての必携の書としてもおすすめできます。なぜなら、用気術の解説を通して、易の八卦すべての要素が詳細に語られているからです。こうした易との関係で語られた方位術の本は極めて珍しく、易と方位術の密接な関係がわかることによって、易の八卦の意味についての理解もより深いものになっていくはずです。

理解前置きが長くなりました。今回は「用気術」の「はじめに」と冒頭部分をご紹介します。

 

はじめに

人間の強弱が、純粋な力の戦いだけできまりのついたのは、有史以前のことで、少なくとも交換経済の時代にはいってからは、むしろ知惠が優劣を決定したようです。

そうなると、知恵とそれを活用する場がほしいと考えるのは当然です。その時代の知恵とは人より早く明日を予測する力、つまり、占いです。こうした要求にこたえて、占術の根本ともいうべき「易」が生まれました。ところが、易は難解で、普通ではなかなか理解できません。そこで、もう少し簡単なものはないかと、あれこれするうちに「九星術」や「干支術」などが登場したのです。

これらの新しい占術は、今よりはるかに難解でしたが、時代が下がるに従って、自分たちに都合のいい部分だけがクローズアップされて、「九気術」「九星法」などの形にまとめられました。

「用気術」とは、易の八卦を基にした「気を用いる術」です。

用気術は、「易経」を基点としているので、易を知らなければ、理解はむずかしいでしょう。

本書は、「易経」の解説から始めて、なぜ南を上に、北を下にした盤を用いるかの理由や、なぜ二黒は南西を定位とし、四緑は東南を定位とするかなど、これまで他の類書ではとり上げなかった、用気法の根本理論をわかりやすく解説しました。

また、これまでの九星法や九気術、あるいは方位の本には書けなかった「傾斜鑑法」や「同会判断術」といった判断法をすべて公開し、あなたの一生の連勢や性格、毎年の運勢判斷ができるように書きました。

もちろん、用気術の特徴である、どの方位へ進めば開連し、どの方位を用いれば災厄にあいやすいなどの判断をする「用気法」についても、詳細な解説をしてあります。

本書によって、自己の能力を正しく評価し、またいついかなるときに積極的になればよいか、方位はどのように用いればよいかを理解してください。そして、少しでもむだの少ない人生を送っていただければ、幸いです。

 

用気術へのいざない

用気術とは何か

用気術とは何かということですが、用気術といってわからないかたも、気学、あるいは方位術といえば、この占術の概略がおわかりになるでしょう。ちなみに、方位術、九星術、気学、真気学と呼ばれているものは、すべて同じ原理と共通の判断法をもとにした占術です。

これをひと言でいうと、人間がこの世にはじめて生を受けて誕生したその年、その月の「気」を土台として占う占術といえましょう。

では、その「気」とは何かといいますと、人間の生活と切り離すことのできない必要不可欠のものに大気があります。人は大気を呼吸して生き、その大気の中で人間らしい形を保っています。それだけに、この大気の作用に順応していれば、万事順調に事が運びますが、これに逆行すると、非常に困難な状態になる、というより生存不可能となります。

用気術を生んだ古代中国人は、こういう肌にふれて感ずる大気ではないが、それと同じように人間を包み、それと同じように人間の生活に大きな作用をする「気」というものがあると考えました。そして、あらゆる物の形質はすべてこの気から成り立ち、その気が動、往来、循環することによって四季の変化が生まれ、万物の成長収蔵が導かれ、人間関係の成敗得失が誘引されるとしたのです。つまり、その気は絶えず往来、循環してやむことがなく、しかも、その往来、循環は一糸乱れぬ秩序に従って整然と行なわれると考えたのです。

この考え方の根底となっている「気」が、用気術でいうところの気です。

ところで、この気は絶えず往来、循環していますから、人間がこの世に生まれ、最初の産声をあげたときにふれる気は、当然生まれた年月日によって異なります。その相違を運命判断の材料としたのが用気術です。つまり、生まれた年、月に働いていた気が、その人の一生をきめる先天運となる、というのが用気術の考えです。

ちなみに、このように、生まれた年や月、または日や時間を運勢判断の材料とするものとしては、ほかに四柱推命術(しちゅうすいめいじゅつ)とか西洋占星術(せんせいじゅつ)があり、これらを総称して周期性占術といいます。なお、人相術や手相術などは統計的占術といいます。

しかし、人の一生は先天運だけによってきまるものではありません。確かに、富裕な家庭に生まれるか、貧困家庭に生まれるか、あるいは肉体的欠陥を持って生まれるか、健康な体に生まれつくか、すばらしい天分を持って生まれるか、そうでないかといった先天連はその人の一生をなんらかの形で規制するかもしれません。が、世の中にはせっかくの先天運を生かしきれない人もいれば、逆に不運な環境からみごとな飛躍をとげる人もいます。こうした後天的な運勢の変化を、用気術では、時々刻々と移り変わる気の変化、あるいは移転や旅行などで場所を移したことによる気の変化によるものとみなします。

つまり、生年月日の異なる人間に異なった気が働いて、そこに独自の性格や宿命的運勢があらわれ、次いで、移転や旅行など、毎日の行動の結果が新しい気の変化を呼んで、それに相応する新しい運命を開く、というのが用気術の根本理論なのです。

では、先天運を決定し、後天運を支配するそうした「気」というものをどうやって具体的に識別するか、それは形のない、肌で感じることのできないものだけにむずかしい問題です。これを解決したのが、一白水性(いっぱくすいせい)、二黒土性(じこくどせい)、三碧木星(さんぺきもくせい)、四緑木性(しろくもくせい)、五黄土星(ごおうどせい)、六白水性(ろっぱくすいせい)、七赤金星(しちせききんせい)、八白土星(はっぱくどせい)、九紫火星(きゅうしかせい)という九つの星に、気を配分する方法です。

この九つの星を九星といい、この九星を使った占術として九星術があります。用気術はその九星術を土台としています。